土地家屋調査士業務と訴訟

               司法書士 土地家屋調査士 佐藤文雄
はじめに
私は、昭和53年から開業し、司法書士業務を約35年、土地家屋調査士業務も34年になるろうとして現在も相談業務等を中心に対応している毎日である。その私の業務が、大きく変化したのは「司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(平成14年法律第33号)」が平成14年4月24日に成立し、同年5月7日に交付された時からである。
司法書士には「簡易裁判所における訴訟代理業務等」を、土地家屋調査士には平成16年改正の不動産登記法による筆界特定制度の新設により、平成17年の土地家屋調査士法一部改正で「土地の筆界に関する民事紛争解決手続の業務のための認定制度」の新設により、より一層の責任と業務拡大に及んだのである。
特に、土地家屋調査士は、境界を確定することの重要性を再認識する時期となった。しかし、私は、土地家屋調査士業務について、境界を調査・確定することに関しては、法改正後から業務に大きな変化あったとは思っていない。
むしろ、外部的には、土地家屋調査士に対する認識を変化させたことは間違いない。 内部的には、境界に対する責任の重さは、加重されたが、境界の確定には、資料の収集、現場の確認等、改正前とその後とは、そんなに大きな変化はない。
裁判所での境界確定請求事件の訴訟は、時間と費用を要するとよくいわれている。果たしてそうだったのであろうか。 私は、当該訴訟に土地家屋調査士の境界に関する関与の不足ではなかろうかと思っている。また、裁判所も筆界特定のための調査を積極的に土地家屋調査士に求めてこなかった経緯もあると考える。
法改正までは、裁判所或いは弁護士も土地家屋調査士への費用の問題もあり、あるいは、土地家屋調査士制度を大いに利用する認識が不足した結果、当該事件の訴訟に費用と時間を要するようになったと思われるのである。
最近は、土地家屋調査士に「境界鑑定」の業務を依頼されるケースのあることをよく聞いている。
さて、私は、不動産訴訟に関して興味をもって業務を受託しているが、裁判手続上、土地家屋調査士の専門家は、もっと司法書士制度を利用していただきたいと思ったのである。また、司法書士も不動産の権利関係を左右する筆界についてもっと興味をもって不動産の問題を解決していただきたいと願って筆を持ったしだいである。土地家屋調査士と司法書士は、不動産問題に関して、共存共栄の関係であり、今後ともその関係を強化してほしいと願っているものである。
今回は、司法書士と土地家屋調査士各制度を利用して不動産訴訟による解決方法について理論はともかく、実践的具体例を示しながら述べるので、読者におきましては、多数のご批判、ご意見をいただきたい。

第1 不動産登記に関する訴訟
不動産に関する訴訟問題には、多種多様に存在する。そこで、土地家屋調査士と司法書士の関連訴訟となると「筆界」を中心とする部分に絞り込めば、下記のとおりである。
1 境界確定請求訴訟
2 筆界未定の解消
3 分筆をともなう所有権移転手続請求訴訟
以上の問題を詳細に、しかも具体的問題として反省も含めながら論ずることにする。
1(1) 境界確定請求訴訟
 原告 X1,X2,X3,X4
 被告 Y
 代理人 A土地家屋調査士兼司法書士
 事例
 X1らは、甲土地を売却すべく、甲の土地上の建物を取り壊して境界の測量、確定するためにAに依頼した。
Aは、Yを除く行政担当者や他の隣地の所有者に立会をもとめたところ確定したが、Yは、その立会に応じない。そこで、Aは、行政の道路境界担当者からの意見を求めたところ「民間地の全員に境界同意がなければ境界証明を発行できない。」とのことであった。
Aは、Yに対し、境界立会をするよう説得することにしたが、Yは、電話で「境界線上にあるマンホールは、当方で施工したものであり、そのマンホール部分の所有権は、当方にある。」と主張したのである。AとX1らは、境界調査測量でそのマンホールの中心部分と確信していたので不意をつかれたような主張であった。 それからは、Aは、幾度か説明したものの、拒否するばかりであった。
甲土地の買主からは「境界確定しなければ本件土地の売買契約を取り消す。」との通知にX1らは、やむなくAの提案していた境界確定請求訴訟を提起することに同意した。
(2)解決するための手順
@ 道路管理者を被告とするか否かを検討
A Yを除く民間隣地者の境界同意を用意する。 
B 本件土地の紛争地面積の訴訟物の価格が、140万円以下であるか否かを計算する。
 (3)境界確定請求訴訟の提起
  Aは、訴訟提起するためには、道路管理者を被告とすることを検討していた。Aは、行政側にその事情を説明すると「被告にはなりたくない。境界に同意する証明書を発行するが、行政としての押印は、Yを含む民間隣接者全員の同意により押印する。」とのことであった。そこで、行政側の境界証明書により被告から除くことにした。
  なお、Yを除く民間隣接者からは、全員の境界同意がそろっていた。
  また、訴訟物の価格が、140万円以下であったので簡易裁判所の管轄として提起することにした。
  訴訟物の価格は、XとYとの境界主張による係争地面積を計算して評価証明書より価格を計算することになる。
  境界確定請求事件の要件事実は、下記のとおりである。
@ 原告が、甲地を、被告が乙地をそれぞれ所有していること。
A 甲地と乙地が隣接していること。
B 原告と被告とが甲地と乙地との境界線について争いがあること。
である。しかし、私は、訴状に現実問題として境界線に争いを生じた背景や事情を記載することにしている。
(4)筆界特定制度との関係
筆界特定制度は、登記官に対する行政上の申立により筆界を特定する制度である。そしてその判断には、法的不可争力を付与されていない。したがって、境界確定請求訴訟とは、別個の制度であり、どちらを選択するかは、当事者の問題である。 私は、本件に関して言えば、境界を早急にしかも経済的観点からすれば、裁判を利用したほうがよいと思い、Xらの同意を得て提訴することとした。
本件は、結果的には、訴状の受理後、Yに訴状送達されるや否や「すぐ、境界に同意するから訴えを取り下げてくれ。」となり、判決まで至らないで解決できた事例である。
なお、注意する点を申し上げると、Yが、本件係争地部分を時効取得したと主張しても、本件の境界確定との関係で関連性のないことである。すなわち、土地の一部を時効取得したとしてもこれにより境界の移動はありえないのである。(最高裁1小判昭和43.12.2民集22巻2号270頁)
(5) 境界確定請求事件の特徴
一般の民事事件との対比から境界確定請求訴訟の特徴を概説するとまず、@裁判所は、請求棄却ができない。A欠席判決をすることができない。B裁判所は、当事者の主張に拘束されない。C主文に表示された境界線が、現地のどの地点なのか確定できないときは、主文不明確の違法を免れない(最高裁三小判昭和35,6,14最高裁民集14巻8号1324号)。
などである。
和解や調停は、所有権の範囲の確認することもできるが、筆界を特定する場合は、なじまない。

以下、訴状は、下記の内容のとおり提出した。

訴    状
          
           平成23年5月23日

郡山簡易裁判所 御中

               原告ら訴訟代理人司法書士  A
          
〒963−8025 福島県郡山市桑野○丁目〇番○号(送達場所)
          原告ら訴訟代理人 司法書士 A
          (認定番号第    号)
           TEL 
           FAX 
              
当事者の表示
 別紙当事者目録記載のとおり

境界確定請求事件
訴訟物の価額  金2万5814円
貼用印紙額   金1,000円


請 求 の 趣 旨
1 別紙物件目録1記載の土地と同目録2記載の土地との境界を、別紙図面記載のイ、ロ点を直線で結ぶ線と確定するとの判決を求める。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
           請 求 の 原 因
1 原告らは、別紙物件目録1記載の土地(以下「原告ら所有地」という。)を、被告は、同目録2記載の土地(以下「被告所有地」という。)をそれぞれ所有している。
2 原告ら所有地と被告所有地は、隣接している。
3 両土地の境界は、別紙図面記載のイ点、ロ点直線で結ぶ線である。
4 ところが、被告は、両土地の境界について、別紙図面記載のハ点、ロ点を直線で結ぶ線であると主張して、境界を争っている。したがって、係争地の面積は、0.63平方メートルである。
5 よって、原告らは、被告に対し、両土地の境界が請求の趣旨記載の通りであることの確定を求める。
紛争地部分発生の事情
      省 略
証 拠 方 法

甲第1号証     土地登記事項証明書   2通
甲第2号証      公図         1通
甲第3号証      写真写し       3通
甲第4号証      係争地求積図     1通
甲第5号証     現況平面図       1通   
甲第6号証     地積測量図       1通
甲第7号証     市道境界確認書     1通

         附 属 書 類

1 訴状副本          1通
2 甲号証写          1通
3 評価証明書         1通
4 訴訟委任状         5通

別紙当事者目録

          原告  X1
          原告  X2
          原告  X3
          原告  X4
          上記原告ら訴訟代理人 司法書士 A
           TEL
                      FAX
 
          被告  Y

別紙物件目録 1
所在 郡山市H町
地番 69番1
地目 宅地
地積 247u93

別紙物件目録 2
所在 郡山市H町
地番 69番4
地目 宅地
地積 165u28

別紙図面

事例2
2(1)境界確定請求訴訟
原告  X
被告  Y
代理人 A土地家屋調査士兼司法書士
甲地は、強制競売によりX不動産より落札され、裁判所にて所有権移転の嘱託登記手続きがなされた。その甲地の前所有者Yは、甲地と隣接している乙地を所有していた。司法書士を兼業しているA土地家屋調査士は、上記甲地の境界調査測量の依頼を受託し、現場に出向き、調査測量を行った。
ところが、隣接している乙地の所有者Yは、前所有であった甲地が競売されたことの恨みをXに露骨に表明した。そして、Yは、境界立会には一切協力できないことをAに伝えた。また、Yは、甲地のYを除く隣接者に対しても絶対協力しないよう申し入れていた。
やむなく、Aは、Yを含む隣接者に対し「境界立会に協力しなければ、損害賠償
請求する。」旨の内容証明郵便で通知した。その結果、Yを除く全員の隣接者が
協力し境界立会したが、Yの協力を得ることができず甲地と乙地の隣接する境界線のみが確定できなかった。
そこで、Aは、Xに対し、境界確定請求訴訟の提起を提案し、了承された。
以下、AはXのため、Yに対し、簡易裁判所に訴えを提起した。

訴    状
          
                       平成19年5月20日

郡山簡易裁判所 御中

               原告訴訟代理人  A

          原告    X
          
          原告訴訟代理人 司法書士 A
          (認定番号第    号)
           TEL 
           FAX

          被告   Y

境界確定請求事件
訴訟物の価額  金39万4512円
貼用印紙額   金4,000円


請 求 の 趣 旨
1 別紙物件目録1記載の土地と同目録2記載の土地との境界を、別紙図面記載のイ、ロ点を直線で結ぶ線と確定するとの判決を求める。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
           請 求 の 原 因
1 原告は、別紙物件目録1記載の土地(以下「原告所有地」という。)を、被告は、同目録2記載の土地(以下「被告所有地」という。)をそれぞれ所有している。
2 原告所有地と被告所有地は、隣接している。
3 両土地の境界は、別紙図面記載のイ点、ロ点の直線で結ぶ線である。
4 ところが、被告は、両土地の境界について、境界立会に応じなく、別紙図面記載のイ点、ロ点の直線で結ぶ線に争いがある。
5 よって、原告は、被告に対し、両土地の境界が請求の趣旨記載の通りであることの確定を求める。
紛争地部分発生の事情
      省 略
証 拠 方 法

甲第1号証     土地登記事項証明書   2通
甲第2号証      公図         1通
甲第3号証      写真写し       4通
甲第4号証      係争地求積図     1通
甲第5号証     現況平面図       1通   
甲第6号証     地積測量図       1通

         附 属 書 類

1 訴状副本          1通
2 甲号証写          1通
3 評価証明書         1通
4 訴訟委任状         1通

別紙物件目録 1
所在 田村郡K町
地番 71番1
地目 宅地
地積 13u53

別紙物件目録 2
所在 田村郡K町
地番 71番4
地目 宅地
地積 165u28


(図面省略)

  


事例3
3(1)境界確定請求訴訟
原告 X役場
被告 Y(登記簿上の名義人)
代理人 A土地家屋調査士兼司法書士
X村役場の担当者よりA司法書士兼土地家屋調査士に「昭和41年に道路建設
に買収した土地の所有者が、行方不明で土地分筆登記及び買収による所有権移
転登記手続を未了にして問題になっている土地がある。」との相談があった。
聞くところによると、その土地は、2筆に分かれているが、現況の道路は、そ
れぞれの筆の一部を横断するように道路敷地となっていた。昭和41年当時、土地登記簿上所有者Yの親戚の者が「これは、自分の土地であるから私の土地である。ただし、土地の登記には、自分の名前がないけれど事実上自分の所有物である。」とのことから昭和41年4月1日に買収金を支払った。そして、X村は、ただちに道路建設をして現在に至っているとのことだった。
(2)所有権移転登記手続請求事件
この事例の場合の問題点として
@ 登記簿上の土地について、その土地の一部の所有権移転登記請求権について
A 時効取得について
B 分筆登記手続の方法
C 行方不明の登記名義人となっている場合の訴訟手続について
それでは@の問題について考えることにする。
X村は、昭和41年4月1日から道路敷地として平穏かつ公然と所有の意思をもって占有してきたことから、本件土地2筆の一部を特定して時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求めていけばよいことになる。
それでは、登記簿上の一部の所有権移転登記手続を求めることができるだろうか。判例(最高二小判昭和30年6月24日民集9巻7号919頁など)も1筆の一部の土地について所有権移転登記を請求すればよいことになっている。
したがって請求の趣旨に「・・・分筆登記手続をした上で・・・」という表現を挿入する必要はない。
Aの時効取得の要件(民法162条)のうち、所有の意思、平穏、公然及び善意は、暫定真実であるから、被告側で時効取得を争う者が、立証責任を負う。
所有権移転登記手続の場合、時効取得を原因とするときは、占有開始時を登記原因の日付となることに注意する。問題は、占有の実体である。これを立証するのに現場写真や証拠資料を検討しなければならない。
Bについては、この場合、原告は、その土地の一部の分筆登記手続に必要な図面を土地家屋調査士が作成し、訴状に別紙図面を添付して裁判所に申請する。裁判所は、その図面を判決書に編綴され、その判決書を代位原因証明情報とし、所有権移転請求権を代位原因として分筆登記手続を行うことになる。
問題は、別紙図面が、残置計算でよいか否かである。すなわち、本件の分筆登記申請には、不動産登記法準則第72条2項の「特別の事情」にあたり、残置計算で地積測量図作成できるかどうかである。 本件は、土地所有者が、行方不明であること、残置部分の境界立会が不可能であること。行政機関が、官地に直接関係のない民地測量することは、越権行為にあたるなどにより「残置計算」による図面で差し支えないと思われ、実務上、受理されている。
Cの場合について、訴訟手続上、いろいろな方法を考えることができる。
まず、公示送達による方法である。この方法は、時間的からも費用的にも簡単である。 もうひとつは、不在者財産管理人を家庭裁判所に選任申立してから行う方法である。第三者(例えば、司法書士,弁護士)が、家庭裁判所より不在者財産管理人を選任されれば、その管理人を被告として訴訟手続を行うことになる。他方、特別代理人(民訴法35条1項)は「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申立てることができる。」と規定しており、損害の発生のおそれを疎明して裁判所に選任手続を申立てることもできる。当然、被告であるから弁護士・司法書士(簡易裁判所のみ)が選任されるので費用(実務上5万円から10万円)の問題がある。
なお、本件事例の20年間占有による時効取得による所有権移転登記手続請求事件の要件事実は、下記のとおりである。
@ある時点からの占有事実
A@から20年経過時における占有事実
B時効の援用の意思表示
C登記簿上の被告名義人の存在
本件の訴訟手続きは、公示送達による方法で行うことになった。
下記様式のとおり訴状を作成し、訴状と公示送達とも同時に申請した。
なお、判決確定後は、判決を代位原因証書とする債権者代位による土地分筆登記、所有権移転登記、地目変更登記の各手続きにより終了となる。

訴    状
          
           平成23年4月8日

簡易裁判所 御中

                 原告訴訟代理人司法書士 佐藤文雄

〒963−6392 福島県○○村
          原告    X村
          上記代表者 X村長   
           
〒          原告訴訟代理人 司法書士  A
           TEL 
           FAX 

住居所不明
登記簿上の住所 福島県○○村
          被告Y   


所有権移転登記手続請求事件
訴訟物の価額  金3421円
貼用印紙額   金1,000円

請 求 の 趣 旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録(1)記載の土地のうち、別紙図面のイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、オ、ワ、カ、ヨ、タ、イの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分412平方メートルについて、昭和41年4月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
2 被告は、原告に対し、別紙物件目録(2)記載の土地のうち、別紙図面のル、ヌ、レ、ソ、ルの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分60平方メートルについて、昭和41年4月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
3 訴訟費用は、原告の負担とする。
との判決を求める。
請 求 の 原 因
1 原告は、小学校の建設するにあたり、別紙物件目録記載(1)、同(2)の各土地の一部を進入道路として買収すべく、昭和40年下旬、被告の自称親類縁者から購入したとされる訴外亡○○と買収の交渉を行い、買収代金を支払った。
2 原告は、昭和41年4月1日付で別紙物件目録記載(1)の土地の内、別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、オ、ワ、カ、ヨ、タ、イの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分412平方メートル(以下「本件土地1」という。)、別紙物件目録記載(2)の土地の内、別紙図面のル、ヌ、レ、ソ、ルの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分60平方メートル(以下「本件土地2」という。)について、昭和41年4月1日買収し、道路工事をおこなった。
3 原告は、本件土地1及び同2を公衆のため、道路として利用されて修繕管理をしながら占有し、取得したと疑わず、被告及び本件土地1、同2の隣接地からなんらの関心を持たず、異議を述べられることもなかった。
4 原告は、昭和41年4月1日からの20年間、以上のとおり、平穏かつ公然と所有の意思を持って玉川村の所有として占有してきた。
5 しかし、本件土地1及び同2は、不動産登記簿上には、被告名義に所有権が登記されている。             (甲第1号証)
6 原告は、本件土地1及び同2について昭和61年4月1日の経過による時効取得完成により所有権を取得したので、この時効の効果を本訴状によって時効援用の意思表示をする。
7 よって、原告は、被告に対し、本件土地1及び同2について、それぞれ昭和41年4月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求めるため、この訴えを提起する。以上
立 証 方 法
1  甲第1号証       登記事項証明書    2通
2  甲第2号証       公図写し       2通
3  甲第3号証       現況図        1通
4  甲第4号証       現場写真       8通

            添 付 書 類
1  訴状副本                       1通
2  甲号証写し                      1通
3  評価証明書                      1通
4  訴訟委任状                      1通

 

別紙物件目録土地
(1)所  在  ○○村
   地  番  58番1
   地  目  山林
   地  積  503平方メートル
  (別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、オ、ワ、カ、ヨ、タ、イの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分412平方メートル、分筆後予定地番58番7)

(2)所  在  ○○村
   地  番  58番3
   地  目  山林
   地  積  541平方メートル
   (別紙図面のル、ヌ、レ、ソ、ルの各点を順次直線で結び囲まれた土地部分60平方メートル、分筆後の予定地番58番8)


平成23年(ハ)第    号所有権移転登記手続請求事件
原告  X村
被告 Y
公示送達の申立書                  

 上記当事者間の御庁頭書事件について、下記被告の住所、居所、その他送達をなすべき場所が知れないので、通常の手続で訴状等の送達ができないから公示送達によることを許可されたく申し立てます。
                    平成23年4月○日
               原告訴訟代理人司法書士 A
  
簡易裁判所 御中

    添付書類      
    1  報告書           1通
    2  不在住証明書        1通
    3  不在籍証明書        1通
    4  不送達郵便         1通


住居所不明・登記簿上の住所
  被告 Y

 


地積測量図(1)(2)
公図写し

  

 事例4
4(1) 筆界未定地の解消のための所有権移転登記手続請求訴訟
 原告 筆界未定地の一部の土地の占有者
 被告 上記登記簿上の行方不明者
 Hは、自分の農地に行方の分からない土地を含む結果、筆界未定地の土地を9筆抱えていた。 弁護士や司法書士に相談しても解決できずにいて、その土地の利用を妨げていた。そして、ある建築会社からの紹介でA土地家屋調査士兼司法書士に相談のため来訪した。 公図を取り寄せると10筆の筆界未定であったが、その筆界未定地の10筆中、1筆(以下甲土地)の所有者不明Yのまま残っていた。
このYの土地が確定できればそれ以外の9筆(以下乙土地)の所有権者が同じであったので合筆して確定できそうであった。
Aは、甲土地の所有者未定の調査のため、現地に出向き、誰が占有者なのかを調査した。現地では、甲土地上に物置小屋があり、境界もほぼ確定しやすい状態に土盛りしていた。Aは、その建物利用者に事情を聞くと「私Xは、私の父が登記簿上の所有者の相続人であるという人からこの土地を昭和55年12月22日に買ったが、その土地を昭和62年2月1日に贈与を受けている。しかし、登記できないで現在に至っている。」とのことであった。
Aは、まず、本件筆界未定地を解消するため、下記順序に従ってすすめることにした。
@ 甲土地をXが原告、Yを被告として時効取得による所有権移転登記手続請求事件として提訴
A 甲土地を現在の所有者Xに所有権移転登記をする。
B 乙地と甲地との境界を確定する。
C 乙地の合筆後、地図訂正、地積更正登記をする。
たとえば、10筆の土地の内、土地の異なる所有者数筆の所有権登記名義人が登記簿上に存在するならば、境界確定請求訴訟も提起する必要がある。この場合の原告は、境界確定する土地所有者であり、被告は、その他の筆界未定地の登記簿上の所有者全員となる。これによって地図訂正、地積更正登記が可能になる。この方法により、筆界未定地の境界を全部確定しなくとも、ある特定の筆界を確定することにより、地図訂正、地籍更正登記が可能になる。
最後に
私は、司法書士兼土地家屋調査士として業務の一端を紹介させていただきました。 我々は、同一内容の業務などありません。毎日が試行錯誤をしながら更なる研究を進めていきたいと思っています。    以上

訴    状
          
           平成21年4月20日

郡山簡易裁判所 御中

                   原告訴訟代理人 A

      〒963−0541        
           福島県郡山市
           原 告   X
          (送達場所)福島県郡山市
           原告訴訟代理人司法書士 
    TEL 
             FAX
      住居所不明  登記簿上の住所
           福島県安積郡
           被告   Y
   
           

所有権移転登記手続請求事件
訴訟物の価額  金1万260円
貼用印紙額   金1,000円
請 求 の 趣 旨
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地について、昭和62年2月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。

請 求 の 原 因
1 訴外野内勝吉(以下単に「野内」という。)は、原告の父親である。
野内は、昭和55年12月22日に被告の親類と称する訴外○○から金140万5千円の売買代金を支払って別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の所有権を取得した。
2 原告は、昭和62年2月1日、○○より本件土地の東側近隣地の住宅用敷地として利用するため、贈与を受けると同時に本件土地の贈与を受けた。
3 原告は、本件土地に木造トタン葺平家建の物置小屋を建てて、本件土地を20年間、善意で平穏かつ公然と所有の意思を持って占有し、他の誰からも異議を述べる者はなかった。
4 本件土地は、不動産登記簿上には、被告名義に所有権が登記されている。
5 原告は、本件土地について平成19年2月1日、20年の経過による時効取得完成により所有権を取得したので、この時効の効果を、本訴状をもって援用する意思表示をする。
6 よって、原告は、被告らに対し、昭和62年2月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求めるためこの訴えを提起する。     以上
           証 拠 方 法
1  甲第1号証       登記事項証明書    1通
2  甲第2号証       閉鎖登記簿謄本    1通
3  甲第3号証       公図写し 
4  甲第4号証       住宅地図(写し)   1通
5  甲第5号証       写真写し       6通
6  甲第6号証       現況平面図      1通
7  甲第7号証       境界承諾書      1通 
8  甲第8号証       不動産売買契約書   1通
9  甲第9号証       念書         1通
10  甲第10号証       陳述書        2通

            附 属 書 類
1  訴状副本                     1通
2  甲号証写し                    2通
3  評価証明書                    1通
4  訴訟委任状                    1通


          物 件 目 録

    所 在     郡山市
    地 番     16番
    地 目     田
    地 積     152平方メートル 

境界承諾書
現況図


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